GNOME 3.0 リリース・ノート
- 1. はじめに
- 2. 新しくなったこと 〜ユーザー向け〜
- 3. 新しくなったこと 〜開発者向け〜
- 4. 国際化
- 5. GNOME 3.0 の入手
- 6. GNOME 3.2 に向けて
- 7. 謝辞
1. はじめに
GNOME 3.0 は GNOME プロジェクトの歴史において重要なマイルストーンです。このリリースでは今のユーザに合わせてデザインされ、また、最新の多様なコンピューティング・デバイスに適している、胸を躍らせるような新しいデスクトップを導入しました。GNOME のデベロッパ・テクノロジーは 3.0 向けにかなり改良されています。モダンで無駄のない技術によって、開発者はより少ない時間と手間でユーザによりよい体験をもたらすことができることでしょう。また、GNOME 3.0 にはユーザが見なれていて信頼している GNOME のアプリケーションの多くが、大幅に強化された上で含まれています。
GNOME 3.0 はプロジェクトの予定通りのリリースサイクルに従い、前回のリリースであるバージョン 2.32 から 6 ヶ月後にリリースされました。このバージョンは 3 年にわたる計画と開発の到達点であり、プロジェクトの 9 年振りのメジャーリリースです。
3.0 は GNOME の新たなる旅路の始まりにすぎません。3.x リリース・シリーズはプロジェクトの計画的な 6 ヶ月ごとのリリースサイクルで登場しますが、3.0 に見られるような革新性の流れの上に作られ、GNOME のユーザや開発者の体験を大幅に強化するでしょう。
GNOME プロジェクトは、すべての人のためにすばらしいソフトウェアを作り上げるために活動する国際的なコミュニティです。すべての成果物はフリーで利用、変更、そして再配布でき、作成に誰でも加わることを歓迎しています。我々の作るものをより良くするのをお手伝いしていただけるのであれば、我々のプロジェクトに参加できます。
2. 新しくなったこと 〜ユーザー向け〜
2.1. 新しいデスクトップ
3.0 では新たな GNOME デスクトップを導入しています。エレガントで美しくありながらも、ユーザーが手軽に、快適に、そして集中して作業にあたれるように設計されました。GNOME プロジェクトは、どんな人にも使いやすいデスクトップ環境を提供することを目指しており、3.0 のデスクトップはその一環となるものです。3.0 には重要な新機能がたくさんあります。
- 2.1.1. アクティビティ・オーバービュー
- 2.1.2. 気の利いた通知
- 2.1.3. 統合されたメッセージング
- 2.1.4. ウィンドウのグルーピング
- 2.1.5. デスクトップ検索
- 2.1.6. 設定フレームワークを一新
- 2.1.7. トピック指向ヘルプ
- 2.1.8. これだけではありません…
- 2.1.9. もっと詳しい情報
2.1.1. アクティビティ・オーバービュー
アクティビティ・オーバービューは、GNOME3 デスクトップの目玉です。コンピューター上のあらゆる作業に対するポータルとして機能し、アクティビティ・ボタンや、左上部のホットコーナー、あるいはウィンドウズ・キーからアクセスできます。ここからすべてのウィンドウを一望でき、タスクの切り替えやアプリケーションの起動を行うこともできます。
2.1.2. 気の利いた通知
ユーザーが作業に集中できるように、GNOME 3.0 では新しい通知システムを採用しています。通知は目障りにならないように行われ、ユーザーが対応できるようになるまでメッセージトレイに保持されます。GNOME 3 の通知システムも対話的に操作できます。通知アイコンをクリックして関連のウィンドウに切り替えたり、共通のレスポンスをするボタンを持たせたりもできます。
2.1.3. 統合されたメッセージング
メッセージング機能は、GNOME 3 デスクトップに直に統合されています。GNOME 3.0 では、通知メッセージに対して直接返事をしたり、画面底部のメッセージトレイから以前の会話をピックアップしたりすることができます。このように、ウィンドウを切り替えることなく、コミュニケーションができます。
2.1.4. ウィンドウのグルーピング
GNOME 3 ではワークスペースのインターフェイスが一新されました。このインターフェイスでは、複数のウィンドウを簡単にまとめることができ、作業を整理するためのシンプルな方法を提供しています。ドラッグアンドドロップで簡単にウィンドウをワークスペースに追加でき、ワークスペース切り替え領域のサムネイルを使ってワークスペース間の移動をすることもできます。
2.1.5. デスクトップ検索
GNOME3 のデスクトップは統合的な検索機能を備えています。それを利用して、アプリケーションを起動したり、ウィンドウを切り替えたり、最近使ったドキュメントや設定画面を開いたりすることができます。GNOME プロジェクトは、このデスクトップ検索機能を将来のバージョンでも拡張していきます。
2.1.6. 設定フレームワークを一新
GNOME 3.0 は新しい設定ブラウザーを搭載しました。設定パネルを検索するのと同様に、ひとつのウィンドウからシステムの各設定にアクセスすることができます。GNOME のシステム設定は再整理されており、お探しの設定を簡単に見つけられます。また多くの設定パネルも簡単に使えるように再設計されました。
2.1.7. トピック指向ヘルプ
GNOME 3 の特色のひとつに新たなトピック指向ヘルプというものがあります。このヘルプは、長大なマニュアルを行ったり来たりすることなく、お探しの情報を見つけることができるように作られています。GNOME ヘルプブラウザーは、性能を大幅に改良し、より高速な検索を実現しました。このため、必要な情報をより効率的に探し出すことができるようになっています。
2.2. アプリケーション
GNOME アプリケーションは、 3.0 へ向けて多大な改良が施されました。そのすべてをここでお披露目することはできません。今回のリリースに含まれる改良の中で主要なものを紹介しましょう。
- 2.2.1. 新しくなったファイルブラウザー
- 2.2.2. 現代的なウェブブラウジング
- 2.2.3. テキスト編集がよりスマートに
- 2.2.4. さらに良くなったメッセージング
- 2.2.5. GNOME 内部の改良
- 2.2.6. ちょっと待って、まだまだあります!
2.2.1. 新しくなったファイルブラウザー
GNOME のファイルマネージャーの Nautilus は、3.0 でそのデザインを一新しました。新しいインターフェイスは、クリーンかつエレガントなものに仕上がっています。さらに「場所」表示サイドバーも新しくなり、主要なフォルダへの移動が簡単にできるようになりました。サーバへ接続ダイアログもさらに効率的になるように作り直しました。
2.2.2. 現代的なウェブブラウジング
ウェブブラウザーの Epiphany は、3.0へ向けて大きく改良されました。ナビゲーションはより高速になり、レスポンス性能も改善されています。さらに今回のリリースでは、地理位置情報サポートも導入しました。ダウンロード機能のインターフェイスとステータスバーも新しくなり、より明瞭なユーザーインターフェイスとなっています。また、これらは多くの外観上の改良とともに、洗練された現代的なブラウジング体験も提供します。
2.2.3. テキスト編集がよりスマートに
GNOME 3.0 ではテキストエディターの gedit が更新されました。インテリジェントなスペルチェック、圧縮ファイルの充実したサポート、および不正な文字を含んだドキュメントの処理機能などが盛り込まれています。また、ドキュメントの閲覧を妨げない新しい検索インターフェイス、複数のドキュメントを一度に表示できるタブグループも 3.0 の gedit に備わっています。
2.2.4. さらに良くなったメッセージング
メッセンジャーアプリケーション Empathy の 3.0 リリースには多くの修正が加えられました。その中には、改良された呼び出し処理、スペル補助、およびパスワードや証明書処理などが含まれています。これからは、望まない相手からの呼び出しをブロックしたり、リモートサーバー上の仲間を探したりすることができます。
3. 新しくなったこと 〜開発者向け〜
GNOME のデベロッパ向けテクノロジーは 3.0 のために強化されてきました。整理統合のかなりの量の作業によって、たくさんのモジュールが非推奨となりました。多くのコンポーネントはシンプルになり、モダンなものになりました。そしていくつかのテクロノジーはより優れた仕組みで置きかえられました。
- 3.1. モダン・グラフィックス
- 3.2. 進化した入力デバイスの扱い
- 3.3. 改良されたテーマ機能
- 3.4. 複数のプラットフォームのサポート
- 3.5. 簡単にアプリケーションを作成
- 3.6. 一級のバインディング
- 3.7. 高速でシンプルな設定
- 3.8. リッチで、よりフレキシブルなユーザーインターフェイス
- 3.9. Anjuta 統合開発環境 (IDE)
- 3.10. GNOME 3 へのアップグレード
3.1. モダン・グラフィックス
GNOME のグラフィカル・ツールキットである GTK+ は古めかしい描画 API と決別しました。モダンなグラフィックスの仕組みに対して整理され、より速く、よりポータブルになりました。
3.2. 進化した入力デバイスの扱い
GTK+ は可能であれば XInput2 を利用するようになりました。これにはかなりの利点があり、入力デバイスのホットプラグが可能になり、タブレットのような複雑な入力デバイスをサポートできるようになりました。XInput2 との統合によって、複数のポインターが利用できるようになり、 GNOME で X11 でのマルチタッチの導入への準備が整いました。
3.3. 改良されたテーマ機能
GNOME 3.0 では新しい視覚的テーマ・システムを導入しました。テーマは CSS 文法の利用のおかげで、より可読性の高いものになり、テーマの作者は曲線、グラデーションやアルファ・カラーなどより多くの効果を使えるようになりました。新しいシステムでは Implicit Animation や RGBA カラーもサポートしています。
3.4. 複数のプラットフォームのサポート
GTK+ 3.0 には簡単に複数のプラットフォームをサポートするための新しい機能が含まれています (複数のプラットフォームに対して同時にビルドでき、かつ、実行時に一つを選択できます)。これによって新しいプラットフォーム、たとえば Wayland、への移行をより容易にすることができます。
3.5. 簡単にアプリケーションを作成
新しい GtkApplication クラスではアプケーションの作成に必要な多くの作業、たとえば、開いたウィンドウの追跡や、プログラムが同時に実行されるのが一つだけであることの保証、アクションの公開、といったことの面倒を見てくれます。GNOME アプリケーションの作成がより便利に、より少ないコードで可能になったということです。この仕組みは 3.x の開発サイクルにおいてもっと拡張されます。
3.6. 一級のバインディング
GNOME では伝統的にいろいろな高レベル言語をサポートしています。GNOME 3.0 での GObject Introspection の導入により、これらの言語バインディングは動的に更新できるようになり、信頼性を確かなものにし、開発者がコアテクノロジーに含まれるいろいろな機能にフルにアクセスできます。
3.7. 高速でシンプルな設定
GNOME のこれまでの設定の仕組みは、3.0 では二つの新しい設定の仕組みで置き換えられました。二つとも以前のものに比べて多くの利点があります。GSettings はシンプルで効果的な設定 API を提供し、クラスのプロパティがほとんど努力することなく、設定項目に結び付けられます。dconf は非常に魅力的な高速なストレージで、二つの協調した仕組みの取得部分の役割を担当しています。
3.8. リッチで、よりフレキシブルなユーザーインターフェイス
GNOME インターフェイス・ツールキットではレイアウトの機能が強化され、インターフェイスのコントロールや内容の表示の両方について、より柔軟で効果的な空間配置が可能となりました。3.0 では新しいインターフェイスのウィジェットがいくつか、たとえば、スイッチやアプリケーション選択ダイアログなどが追加されました。
4. 国際化
世界中のGNOME 翻訳プロジェクトのメンバーのおかげで、ユーザー向け、管理者向けドキュメントも含め、GNOME 3.0 では 50 を超える言語でのサポートを提供しています。
サポートしている言語:
- アストゥリアス語
- アラビア語
- イギリス英語
- イタリア語
- インドネシア語
- ウクライナ語
- エストニア語
- オランダ語
- カタロニア語
- カタロニア語 (バレンシア)
- カンナダ語
- ガリシア語
- ギリシア語
- グジャラート語
- スウェーデン語
- スペイン語
- スロベニア語
- セルビア語
- セルビア語 (ラテン文字)
- タイ語
- タミル語
- チェコ語
- デンマーク語
- トルコ語
- ドイツ語
- ノルウェー語 (ブークモール)
- ハンガリー語
- バスク語
- パンジャブ語
- ヒンディー語
- フィンランド語
- フランス語
- ブラジル系ポルトガル語
- ブルガリア語
- ヘブライ語
- ベトナム語
- ベンガル語
- ポルトガル語
- ポーランド語
- マラーティー語
- ラトビア語
- リトアニア語
- ルーマニア語
- ロシア語
- 中国語 (中国)
- 中国語 (台湾)
- 中国語 (香港)
- 日本語
- 韓国語
他の多くの言語は部分的にサポートされています。GNOME の翻訳についての詳細な情報は翻訳ステータスのサイトをご覧になってみてください。
GNOME ほどの規模のソフトウェアパッケージを新しい言語に翻訳していくことは、たとえ専門の翻訳チームがあったにしろ「半端のない作業」になります。今回のリリースでは特にウイグル語チームが翻訳率を 37ポイント以上も向上させ、エスペラント語チームも 21 ポイント以上、向上させました。
5. GNOME 3.0 の入手
GNOME 3.0 のソースコードはダウンロードと再配布がフリーです。(とはいえ、ユーザーは GNOME 3.0 がディストリビューションやベンダーから入手可能になるまで待つのをお勧めします)。GNOME 3.0 の入手方法についての情報は、GNOME 3 ウェブサイト で入手できます。このサイトでは、リリースを試せる 3.0 のライブイメージも提供しています。
最先端の体験のため、GNOME 3 デスクトップではグラフィック機能のハードウェアによるアクセラレーションが必要です。もし利用できない場合には、GNOME 3 フォールバック・デスクトップが優れた体験を提供し、このリリースに含まれている改良点の多くを組み込んでいます。
6. GNOME 3.2 に向けて
GNOME 3.x シリーズの次のリリースは 2011年の9月から10月に予定されています。3.0 に対して、アクティビティ・オーバービューへのドキュメント・インターフェイスの追加、トップバーのアプリケーションメニューの拡張、ドキュメントの共有やウェブ・アカウントの設定の統合など、多くの新機能や機能強化が計画されています。
7. 謝辞
このリリースは GNOME コミュニティの多大で献身的な働きなしには達成できませんでした。実現へと導いたみなさんに祝福と感謝を捧げます。
このリリースノートはどんな言語にでも自由に翻訳して頂いて構いません。もしあなたの言語に翻訳したいのであればGNOME 翻訳プロジェクトまで連絡してください。
この文書は Creative Commons Sharealike 3.0 license でライセンスされています。Copyright © The GNOME Project
GNOME コミュニティの助けの元、Allan Day が編集しました。翻訳は日本語翻訳チームの過去の翻訳成果 (翻訳者は佐藤暁、相花毅、草野貴之、松澤二郎、赤星柔充、西堀清貴、OKANO Takayoshi) をベースに、草野 貴之 および、松澤 二郎、OKANO Takayoshi が行いました。